登場人物もれなく全員、倫理観が欠如している…∣『熊の場所』舞城王太郎 (7p〜84p「熊の場所」を読んだ感想)

小説

久しぶりに小説が読みたくなり、図書館へ本を借りに行った。
タイトル(銀牙の影響で犬と熊には興味があるから、熊に関連するなら読んでみたい!と思った)と、ポップな表紙に惹かれ、この本を立ち読みしてみたら1行目からま〜っ癖の強いこと強いこと!

なんと、

僕がまー君の猫殺しに気がついたのは僕とまー君が二人とも十一の時、つまり同じ保育所に通っていた僕たちが一緒に西暁小学校に上がり、同じ教室で勉強し始めて五年目の頃だった。

p8L1

から始まるんです!!

ね、猫殺しってなに!?、と気になってしまい速攻で借りることに決めました。

で、家へ帰ってからゆっくりと読み進めた訳なんですが、この小説面白すぎる…!!
集中して読んでたもんだから、ずっと同じ姿勢だったのか、腰が痛くなりましたけど……それでもまあいっか、と思える面白さです!
まず、まー君の猫殺しに気付いてしまうのもそんなに非日常的な事が原因ではないんです。
ただ、休み時間に友達とふざけていただけ――。
それだけの、誰にでも起こり得そうなことがきっかけで猫殺しに気付く。
それというのも、机と机の間を駆け抜けようとした時に、まー君のランドセルを蹴ってしまっただけなんです。
蹴られた弾みでランドセルの中から猫の尻尾らしきものが出てきて、最初は確信が持てなかったけど……まー君が拾い上げる時に断面が見え、まだ新鮮な猫の尻尾だと確信してしまう。
尻尾の切られた猫の生死は分からないけど、きっと死んでしまっているよな…とその日1日まー君への恐怖で気が気じゃない状態で過ごす主人公。
帰りの会が終わったあと、誰よりも早く玄関を出て、まー君から逃げるように家へ帰る描写がリアルすぎてゾクゾクしましたw
わー、早く帰って!逃げ切って安心させて!怖い怖い…と無我夢中でページをめくっていたんですが、本当に没入感が凄くてハチャメチャに怖かったです。
感覚が鋭くなって、いつも気にならない川の音とか気になっちゃう描写も……生に執着してる感じが滲み出ててリアリティー増し増しでした!
で、主人公は家へ帰って一安心し、
『自分のちゃんと生きていること』
『これからすぐに死ぬということはないこと』
『自分が完全に安全な場所にいて、自分が死にそうになればちゃんと誰かが助けてくれるということ』を確認し、一息つきます。
このシーンが凄く良い描写だな、と思いましたねアタシ。

人間寝る前の布団の中なんて一番安全安心な状態に居ながら、明日への不安だの人間関係への不満だのウダウダ考えちゃう人とか居るじゃないですか。かくいう私もテスト期間とかだと不安で不安で仕方なくなって枕を濡らす夜とかもあったんですけど、やっぱり安全な状態に居ながら勝手に不安を全身で味わうってアホなことだと思うんですよね?
この主人公みたいに、どんなに危険で不安な現状にあっても…一旦、今現在の状態を考えて安心するというのはやっぱり大事だな、と思います。
それで、安心しつつ明日行きたくないな、と思う主人公なんですが、私だったら怖いし次の日から学校サボっちゃおうかなとか…先生だったり親だったりに相談してどうにかしてもらおうかなとか思っちゃうんですけど、ここで違うのがさすが主人公!
これからずっと怯えるのは嫌だし、どうせ明日には学校へ行かなくちゃならない。明日恐怖に立ち向かうのでは遅いから、今すぐに戻らなきゃ……と考えるんです主人公。

これは、

恐怖を消し去るには、その源の場所に、すぐに戻らねばならない。

p26

という父の言葉に影響を受けていたからなんです。

主人公の父が、アメリカに旅行中。ユタの原生林を現地で知り合ったロッククライマーと共に歩いていた時に、体長2メートルをゆうに超える巨熊と出くわした時の武勇伝も……リアリティーがありすぎて面白かったです。その武勇伝を覚えていた主人公が、自分も恐怖に打ち勝たなくてはと躍起になるわけですね。

恐怖を消し去る為ホントに死に物狂いで、がむしゃらやる主人公は見物!

その過程で、まー君の新たな一面が垣間見えたり、さらにミステリアスな雰囲気が強まったり……まー君という一人の人間が浮き彫りになっていくのが興味深かったです。

結構キツめの?グロ描写もあったんですが、ストーリーが面白い分すらすら〜っと読めちゃいました。

後味は良いとも悪いとも言えないんですが、やっぱり悪いことは返ってくる、というか…罪はいつか償わされる、というか…好き勝手はできないなぁやっぱりと感じる終わりでした。

個人的に、恐怖を克服しないとはどういうことか主人公父が言っていた言葉が響いて学びになったのと…まー君の年相応な一面が可愛らしいなと思えた所が良かったですかね!
まー君のミステリアスさは少し魅力的です、まあリアリティーありすぎて恐怖も強かったですがw
(H×Hのフェイタンだって拷問したりとか結構グロいことするのに、最初から手放しで「かっこいいー♡」となったのは何故? グロ描写の丁寧さと、ビジュアルによるものでしょうか…)

描写が細かくて、情景が頭に浮かびやすく、臨場感たっぷりなので、ぜひ一度手にとってみてください!✨

Ps.結構カロリー高めな感じだったので、「バット男」「ピコーン!」はまた今度。

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